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文学の面白さ④(奥泉光さん)

以前も紹介した「人生に、文学を」プロジェクトの一環で行われた講義の一つ。



「近代小説の手法をめぐって」ということで、前半は近代に至るまでの小説における流れをレクチャーされています。19世紀は「リアリズムの時代(社会のリアルな姿を描く・主人公が読者と等身大)」に対して、20世紀は「モダニズムの時代(リアリズムにあったあらすじや人物描写といった構造を取っ払った中で物語が進む。アンチリアリズム)」。ちなみに19世紀以前は「ロマンスの時代」とのことで、主人公は非現実的で空が飛べたりする(超越的な主人公)話が多かった。


このような流れをベースに、日本では1887年〜89年にかけて二葉亭四迷が発表した「浮雲」が最初のリアリズム小説となり、ほどなくして1906年の夏目漱石の「草枕」がモダニズム作品の最初となる。共に外国文学や海外経験に影響されて書かれた小説ということで、浮雲などはある意味途中で終わってしまう小説でもあったのに、ごく平凡な市民の思いや葛藤が描かれているという意味で、人々には新鮮で共感を得る作品になった点は非常に興味深いものがあります。


また夏目漱石に関しては、なぜ彼が偉大な日本を代表とする作家なのかを理解する、一つのエピソードにもなるわけですね。


そしてさらに印象深いのは、モダニズム(アンチリアリズム)の後に、リアリズムとモダニズムを統合する「ポストモダニズム」の時代がやってくるという話題。互いにいがみ合う流れから、お互いの良さを取り入れ新しい発展を遂げるのが「ポストモダニズム」の醍醐味。


文学に疎い(でも興味を持っている)私にとっても、文学史のアウトラインを知るお話だったと思います。


※「草枕」;「就職に失敗した主人公が2階から1階に降りられなくなる(1階には主人公の苦悩を知らない家族がいる;両者の断絶が表されている)」というような終わり方の小説。この小説は未完のまま終わったともされているが、奥泉先生はこれを偉大なる失敗だと考えていらっしゃる。


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