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こころの物語② 「変わることの良さとは?」

前回は、「変わることの良さとはなにか?」という疑問で終わっていたと思います。今回はその続きを。


自分が変わることによって、“必ず”良い変化が訪れると保証されていれば、そしてそれが変わる前から確信されていれば、人は変わることにそれほど躊躇しないのだと思います。しかし多くの場合、自分が変わることにさえも不安を抱いてしまうので八方塞がりになってしまう。そういうことだと思います。


例えばDVを受けている人を例にすると、暴力をふるう相手に反抗したり暴力が嫌だと意見すれば、もっと殴られるのではないかと恐れたり、自分が相手されなくなるのではと恐れたりして(=見捨てられ不安)、その怖さに比べれば我慢していたほうがマシとその場から逃れられない人がいます。


この例で考えると、変わることは「もし自分が相手に見捨てられても、寂しさの中で生きていく」ことも含むことになる。もっと端的に言えば、その人に『自立』が必要だということ。


そしてこの事が、DVを受けている人は殴られるよりも「怖い」と感じてしまう。


つまり自立の責任に耐えられない、または自分は自分の力では生きられっこないと断定的に考えている。こうした人の中には、子どもの頃から「見捨てられ不安」を抱えてこられた方が多いので、自立という課題を乗り越える心の余裕がなく育ってきてしまったので仕方ないわけですね。だから大事なのは、どうしたら自分に自信が持てるのかを段々と検討していって、自分の不安を整理していくことになるわけです。


このDVの例に限らず、どんな人でも変わることの中には、多かれ少なかれ自分が変化することで起こる不安を恐れる気持ちがあるものです。


こうした問題に対してカウンセラーとしては、「そんなの大丈夫」「考えすぎ」と言いたいところですが、まあ変化には何か失うものがあって、リスクがあるのも事実だと思います。だから変わる良さを知るためには、以下のような状態を生む必要がある。


「変わるメリット(得るもの)」>「変わることによって生じるデメリット(失うもの)」


変わることのメリットが、その事によって生じるデメリットより大きいと思えれば、その事自体が大きな成長です。この段階で生じる変化は、自立を引き受けることだけでなく、目の前の状態を客観的に判断できる力が身につくとか、自分の考えを人に影響されずに持つことができるなどの成長が含まれます。


この変化はとても大きい。そしてここに変わることの良さがあると思います。


成長の喜びは、この段階で初めて理解できることでもあるので言葉だけでは通じにくいと思いますが、そのことをもう少し深めるために、次回は「不安の正体」ということで話進めていきたいと思います。




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