「自尊心」「自己肯定感」「自己効力感」
このよく聞く3つの言葉の意味の違いは何?
①「自尊心」
は英語でseif-esteem(セルフ・エスティーム)と訳されるのが一番有名ですが、self-respect(リスペクト;尊敬)やpride(プライド)とも訳しても良いそうです。
自尊心は、そのまま「自分を尊ぶ(とうとぶ)心」なので、自分自身を認めることができる、自分を素晴らしいと思える、自分は成功する力を持っている、といった気持ちを表していると思います。しかしprideという訳が与える印象からもわかるように、それは「良い自尊心」と「悪い自尊心」というものがあると思います。悪い自尊心の代表は、「うぬぼれ」や「自己愛(ナルシシズム)」といった問題です。裏付けや努力がないまま、「自分はすごい」ー「あいつはだめ」という気持ちを持っているのであれば、それは人間関係で軋轢を生むわけですね。
しかし一方で、自信がない人に対して「自尊心を育む」ということには意味がありそうです。よく子育ての分野などで、「子どもの自尊心を育てよう」という言葉はよく聞きますし、「子どもをよく褒めよう」とも言われます。ただそうした事をしても「自尊心が上がる」子どももいるだろうし、「うぬぼれてしまう」子どももできるかもしれないということで、最近ではほめることに疑問を感じる専門家も多いようです。うーん、じゃあどうしたらいいんだろう?。
②「自己肯定感」
はかつてはself-positivityが訳として使われましたが、現在ではself-affirmationに統一されているそうです。この定義は様々なようで、上に挙げた「自尊心」や後で紹介する「自己効力感」「自己有用感」も含めた広い概念という指摘もあり、まあ厳密には違いが無いようです。でも英訳のaffirmationというニュアンスとしては、「肯定」以外に「断言」「確約」「支持」というような意味があるので、「自分を”イエス”と言える!」みたいな勢いがあるのかも知れません。
またカウンセリング的に言えば、自分の行動の結果、良いことが起これば「イエス!」と言えるのはわかりますが、その結果が悪い結果であっても、それを肥やしにするなどして結果的に「イエス!」と持っていける(感じられる)のであれば、本当の意味で自己肯定感が高い人のようにも思います(「失敗は成功のもと」的な思いを持てる人)。
③「自己効力(有用)感」
は英語ではself-efficacyと訳されます。この言葉は、最初にこの考え方を発表した心理学者の「アルバート・バンデューラ」とともに説明されることが多い考え方です。つまり「自分がある行動をした時に、上手くやれると自分自身が思えていること」という自己認知を表している。心理学者が定めた考え方でもあるので、ありがたいことにその背景や道筋がスマートに整理されていたりもします。
自己効力感を生み出す基盤
1.達成経験(上手く行ったり成功したりした経験)
2.代理経験(他の人が上手く行ったのを観察した経験)
3.言語的説得(自分に能力があることを教えてもらったり、励まされたりすること)
4.生理的情緒的高揚(ポジティブな刺激や体験によって気分や身体感覚が高揚すること)
5.想像的体験(自分や他の人の成功経験を想像すること)
6.承認(他人から認められること)
近年では、自己効力感が高い人は、心身の健康も高いという研究結果が紹介されるなど、医療分野でも注目されている考え方であります。「自尊心」とも近からず遠からじな印象でもありますが、単に「褒めて伸ばそう」というだけでなく、様々な自分自身の経験や取り組み、意欲、に加え、「まね」や「承認」などの他者との関係におけるポジティブな経験が「自己効力感」を高めていくことがわかりますね。
ちなみにバンデューラは、先の「2.代理経験」を発展させて、「モデリング学習(観察しまねする学習)」の重要性を「社会的学習理論」という考え方の中で提唱しました。
私としては、子どもの自尊心をどう育てるかを考えた際に、このバンデューラの考え方を参考にすると、いろんな対処が考えられるのではないかと思ったりもします。
このあたりのお話は、また今度。
Comentários