薬物依存には、ある種の「流行」があります。5年くらい前には「合法ドラッグ」が流行り、社会問題にもなりました。
最近にわかに若者の中で流行しているのが「カフェイン」です。ご存知のように、カフェインはコーヒーやお茶にも含まれている物質で、もちろん違法ではありません。依存性物質をの特徴を表現する時に、「アッパー系(気分を高揚させる;覚せい剤など)」と「ダウナー系(気分を落ち着かせる;アルコールなど)」という分け方がありますが、「カフェイン」はアッパー系で、その結果よく知られている効用に「眠気が取れる」というものがあります。しかしコーヒーやお茶に含まれるカフェインのレベルでは、すごく眠気が覚めたと感じている人はあまり多くないと思います。
そんな中ここ数年ほどで、「レッドブル」「モンスタードリンク」と呼ばれるような200円程度の”栄養ドリンク”がよく売れています。そしてこの中に高濃度のカフェインが含まれていて、若者に絶大な人気を得ているのです。私も一度飲んだことがあるのですが、これまでの瓶入りの栄養ドリンクと明らかにちがう、「カーっと効く」感覚があるのには驚きました。
受験勉強の対策や眠気覚ましに、あるいは日常のドリンクとして、中高生の間でもこうした栄養ドリンクが広まっています。そしてその裏では、過剰なカフェイン摂取による健康被害の報告が出始めているのです。
これはよくあるケースです。
Aさんは受験勉強の眠気覚ましに友達から紹介されたカフェイン入り飲料を飲み始めた。最初はそれによって集中力が高まるなど効果を感じ喜んだのだが、数ヶ月後にだんだんと効かなくなってきたので、量が増えていった。そのうちに頭痛や倦怠感が出てきて疲れを感じやすくもなってもいったが、不思議とカフェイン入り飲料を飲むとそれが一時的に解消されるので手放せなくなった。その後もっと効果を感じたいと思って、市販の錠剤やネット通販のタブレットにも手を出すようになってついには依存症になってしまった。
この例から薬物依存に至る経過や特徴を読み取ることができます。まず最初に、①薬物の効果を感じる時期がある(→人によっては自分にとっての救世主のように感じる)。しかし、②その後「耐性」がついてきて、最初の量では効果が出なくなるので、量が増える。そして③「離脱症状」と呼ばれる、体内からカフェインが排出されたことによる身体的な不調が現れる(→体内に再びカフェインを入れれば不調は解消される)。そして、④体内にカフェインを入れ続けないと普通でいられなくなる(→依存症)。
カフェインは合法の依存性物質なので、なかなかそのデメリットについて世間では知られていません。またそれを手にしている人の多くは、好奇心旺盛な若年層ということもあって、早期の薬物教育などの対策をしていかなくてはならないと感じます。これまで「大麻」が若者のゲートウェイドラッグとして考えられていましたが、これからはこの「カフェイン」もその入口となって、その後のヘビードラッグの使用に繋がる危険性も考えておかなければなりません。私としては、やや深刻に捉えています。
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