こころの物語⑥ 「育てる」

今回は、心を「育てる」というお話。


「育てる」ということでよく連想されるのは、「子育て」だと思いますが、これは人間の営みの中でも、かなり大変なものの一つだと思います。


女性の中には、出産を境にして急に不安感が高まったり、パニック障害になったり、「うつ病」になってしまう人たちがいます。つまりこれは、自分の将来や子育てに自信をなくしてしまうことから生じることでもあります。またアメリカの研究では「マタニティーブルー」のレベルであれば、約7割の女性がこうした気分の落ち込みや不安を経験するという話もあります。


「ドナルド・ウィニコット(1896-1971)」は、子どもやその母親のこころの治療に尽力した精神分析家ですが、彼は困難が伴う子育てのポイントとして「ほどよさ(good-enough)」という言葉を用いて説明しました。


これは「上手くいくことだけでなく、失敗も含めて子育てなのだ」という考え方です。また別の言い方をすれば、ある程度の子育てができていれば、母親の失敗から生まれる子どもさんの苦悩は、それを自分の力で乗り越えるための試練にもなって、成長にとって欠かせない出来事でもあると考えた点です。子育てで自信をなくす母親の多くは、自分の子育てが上手く行っていないことを責める人が多かったので、ウィニコットのこの考え方は、当時の多くの母親の励みになったことでしょう。


「育てる」ことの成果は、遅れてやってくるものです。特に子育てであれば、「言葉を喋れるようになる」「歩くようになる」のは時間が経ってできることなのですね。またそれは、親の努力だけで進むのではなく、子どもさんの発達や成長と協調して進むことである。畑仕事で言えば、畝(うね)を作って、種まいて、水をやって、それでその植物の成長を「待つ」というのも仕事である。


さて私たちは、自分をどう育てているのでしょうか?。上手く行ったことだけで自尊心を持つだけでは、失敗した時に一気に悪くなってしまう。一番強いのは、失敗したとしても自分を保つことができる。あるいは失敗を糧にできる行き方ではないでしょうか?。


それは自分を「育て」「種をまき」「待つ」ということも重要なようです。


次回は「種をまく」というお話。