能に関する入門的な解説動画を発見しましたので、ご紹介いたします。
東京や大阪、名古屋にはいくつかの能楽堂があり、それらを運営するさまざまな流派が今でも文化の伝承を行なっています。
動画では、室生派の宗家自らがお話をされていて、「能楽とは、心を鎮めるための芸術。そのために美術館を訪れるのに近い芸能である」とおっしゃっていたり、「能は光の芸能である」などとおっしゃっているのが印象的です。
以前ある能楽師の方が「能に使われる言葉はかつて日本で使われていた大和言葉なので何を言っているのかはわからない。そしてストーリーがわからなくなるので眠くなりやすい。でもその眠くなることにも意味がある」というようなことおっしゃっていました。それは能を見ることで、私たちの過去の記憶や無意識に働きかけているところがあるようで、単にわからないから眠くなるのだはなく、そうした部分が活性化するから眠くなるのだというようなお話しでした。
またこの動画では中盤に「能面」のことについても解説されていますが、能面の表情が光(その結果生まれる影)とのコラボレーションによって様々な表現を生み、私たちに訴えかけてくるようです。「般若の面に現れる影が左右で微妙に異なり、それは最初は怒りを表現し、最後には怒りが晴れた表情を表す」などという解説も非常に興味深いものだと感じました。
私はこのブログで、文学や芸術、芸能などの解説を行なっておりますが、その理由はこうしたものが人間の歴史において、普段は見えにく心を映し出す鏡として機能していることの重要性を感じているからです。
能などにも見られるように、そこには「わかりにくさ」があるわけですが、そのわかりにくさにも大事な意味があって、「空白」や「欠損」を埋める意味で私たちは自分の経験や感情をそこに投影したりします。
普段見ないようにしている自分の思いを活性化し、置き場所を設けることができる文化や芸術は、人間の心にとって重要な装置だとも思っています。また悲劇と喜劇が交差する物語において、笑い、泣き、感動するという感情の豊かさを感じ、そしてそれを共有できる場であることも大事だと思っています。
さて探すと他にもいくつかの能の入門動画や解説動画などがネット上にはあるようなので、また機会を見てここでもご紹介したいと考えております。
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